携帯嫌い

2003/07/09

携帯電話が嫌いである。

どうも、サラリーマンになって一番羽振りがよかった10年ほど前に、携帯電話とポケットベルをダブルで持たされたことのトラウマなのかも知れないのだが、飛び道具が大嫌いなのだ。

だからと言って、「携帯もってないもんね」という言い訳は21世紀のビジネスマンとして通用するわけにも行かないので、一応、PHSだけは所持することにしている。まぁPHSでもほとんど都内をうろつく分には困らないんだけど。

電話をかけるときはデフォルトで「184」を頭にくっつけるように設定して徹底的に「非表示」である。

だいいち、あんなにボタンがあるのが許せない。昔の電話なんて、せいぜいダイアルを回すためのアナが10個ほど空いているだけのシンプル円盤が付いていて、ジーコジーコ回していたんだけど、いつの間にか#だの*だの、「カナ」だとかカーソルキーだとかがくっついている。未だに用途がよくわからんのだ。

それでいながら、IT関係のエンジニアの仕事をしているというのが信じられない。

ちなみに、仕事以外では、ほとんどそのテの機械に関してひどく音痴である。まず、ラジカセが使えない。今あるのは10年ほど前に購入したCDラジカセで、リモコンにごっちょりボタンがついていた。

ラジオを聴きながらスリープモードにして、翌朝何時に起きるかをセットするのがひどく面倒だった。あまりに面倒だったので、ラジオはFM東京にセットして一日中つけっぱなしだ。だから、夜中のトーク番組なんかを夢見がちに聞いてしまって、朝の4時に目が覚めてしまうこともある。まぁ、早起きは体にいいとは言え、毎晩夜中過ぎに床に付く生活ではちょっと早すぎだ。

たまに停電なんかがあって、メモリ内容がすっかり飛んでしまったときは悲惨の一言だ。

あと、職場の電話だな。内線の転送の仕方が分からない。だから、席次なんかが移動したら大変だ。転送できないもんだから、あちこちのフロアを「保留」のまんま、走り回ってしまう。オマエが一番オフィスでうるさいといわれてしまう。

まぁファックスは最近使わないからいいけれど、コピーも最近はやけに使い方がよく分からなくなってきた。

次にビデオだな。

大体、今テレビがない。だからビデオも見ない。随分昔に職場の同僚から「いらないから引き取れ」と言われて引き取ったテレビを更に10年くらい使ったんだけど、ある日、スイッチが入らなくなってしまって、そのまま多摩川の川原に捨てた。それ以来テレビは不要だ。

学生時代、貧乏だった頃、テレビがなかったので、別に困らないだろうと思ったが、10年近く見続けてきたテレビに慣れてしまって、なくなるとやはりさびしくなった。電気店のテレビを見ながら、どうしようか、今なら1万5千円も払えば買えるんだから、と思いつつ、ついに買わずに済ませたら、さっぱりとしたテレビがない生活に慣れてしまった。

多分タバコを止めたときもこんなさっぱりした生活になるんだろう、というくらい。

ついでにつながっていたビデオも使わなくなった。まぁせいぜいレンタルビデオ店でビデオを借りてみるくらいで、一度も番組予約なんかしたことがない。

ただ、ちょうど買った時期に長野オリンピックがあったので、一度だけ録画したことがある。

ところが、録画のボタンを押すと、テレビの画面にいっぱいいろいろなメニューがごそごそ出てきて、訳がわからないあいだに、ラージヒル団体の決勝が終わってしまった。

だから、唯一自分で録画した番組には原田のインタビューしか残っていないはずだ。

それでも、IT関係のエンジニアの仕事をしているというのが信じられない。

不思議なもので、コンピュータ関連のマニュアルはあまりにも不親切である。それでいながらほとんど英語だったり、たとえ日本語があっても直訳調であったりして、意味不明である。だからなのかも知れないけれど、あちこちいじくり回してなぜか使いこなしてしまう。ところが携帯電話だとかビデオだとかは、やたらとマニュアルが分厚くって、親切に書かれているものだから、どこに何が書かれているのかまったくわからないのである。しかもだ、何でもひとつのボタンで用を済ませようとしている男女兼用便所みたいなもんだ。

未だに携帯電話が使えないし、怖くて仕方がないのだ。

だいたい、携帯電話のバイブレータがブルブルと腰の辺りで震えているのが気持ち悪い。こそばいのである。

「あ、そこそこ、そこ弱いのね、だめ、やめて、息吹きかけないでね」

というくらい、気持ち悪い。それに不吉だ。大体不吉な連絡しか入ってこない。人生のクレームのすべての入り口なのだろう。鳴ってうれしい連絡なんて入ってきたことがないのである。

多分それよりも、友達が少ないのが一番の原因なのかもしれない。

他人と付き合い、言葉を交わし、笑い、泣き、他人の人生を掻き回し、自分の人生を掻き回す生活よりも、ひとりで静かに本でも読んでいる生活が好きなんだろうな。きっと。

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