ついにカイシャのPCに Linux をインストールしたぞ。Open Linux だ。戻る島謙作の UNIX 経験
島謙作が社会人として入社して次の日に行ったことは、社内にあった HP9000 の起動と終了だった。
おぉ、Hullett Packard だって!。まるでクルマじゃん。というのが第一印象だ。なんとも独特のフォント。いかにも”アメリカ製だぜ”というあのグリーンのディスプレィはカッコ良かったなぁ。ほとんど HAL2000 の世界。
何しろ当時の経営者がとんでもないベンチャー野郎で、ウン百万というこのキカイを端末もなしで購入してしまったというヤツだった。
まぁ真っ先に習うのは vi の使い方だよな。笑えない話なんだけど、いくら :WQ を実行してもエラーだとのたまう vi エディタに怒ったことがある。「どうしてエラーなんですか?」との先輩への質問に「なんだ caps ロックしてるじゃん」ん?、確かに左にある CAPS というキーを押すとカチリと音がする。キーを叩くと大文字しか出ないわけだ。カチリ、ESC q! あ、ちゃんと抜けた。まぁそんなもんだ。結局ぜんぜんギョウムに使われることもなく哀れ HP9000 はワタクシのトレーニング用の10進計算プログラムと、素数を求めるプログラムだけを最後に HDD に収めたまま中古屋へ売り飛ばされたとの事だ。
その後、生産関係の管理ソフトウェアを4ヶ月ほど書いた後、島謙作としてはPC関連のギョウムにシフトしていったと言うことだ。つまり vi の使い方と make の走らせ方とファイルの cp の仕方と rm とmv の仕方は知っているというのがワタクシの数少ない UNIX 経験なのだ。
vi でしこしこ文法の修正をした後、ESC 押して wq を実行して make [enter] したあとはさっさとマシンルームのコンピュータの裏側で居眠りをするという4ヶ月だった。
30分もするとコンパイルとリンクが終わって、走らせて core 吐かせて、意味のぜんぜんわかっていない”ポインタ”の操作をヘヘとお伺いした。4ヶ月だった。
ということで Linux正直申し上げて Linux は全然しらんぞ、ということだ。どうやら必要なネットワークのドライバがあるらしいということで Open Linux を選択した。まぁそれ以上特別なことは特にない。どっかでかっぱらってきたディスクドライブをスレーブにつないで CD を突っ込むとパーティションツールが起動する。第二ドライブを選んでフォーマットして、起動ディスクを突っ込んでインストーラを立ち上げるとインストールが始まる。大した事はないのだ。多分最近の Windows のインストールよりよっぽど簡単だ。ただし MBR だの lilo だのを理解するまではね。
まぁ、その辺は専門書を読んでいただければいいのだけれど、とりあえず、ちゃんと動くし、ブラウザだってちゃんと NSC4.61 が動く。
使ってみた感想なんだけど正直言って「遅いぞ」ってことだ。P6-200 じゃこんなもの?ウワサによると 486 でもサクサクと言う話なのだけれど、 X の動きも遅いしまるで出来損ないの Java で書いたN社のウィンドウシステムみたいに動きがもっさりしている。おーいだれか Trio64 のディスプレィドライバだとかチューニングに関する”ツボ”なんてぇのがあればさっさと教えてほしいのだ。
しかも MBR を上書きしてしまったらしく、全然普段つかっているOSが起動しない。え、またインストールしなおし? ってトコロで新入社員Aに聞いた。
「どうやらこの lilo ってのがツボなんだけどな、マニュアルにそう書いてある」
「うーんリロねぇ、結構やばいんですよ」
(なに! lilo を リロとあっさり言いやがった、しかも)
「リロコンフのそこ書き換えてみてくださいよ、立ち上がるといいんですけどね、あ、そこ、Boot そこで win ね」
なんとちゃんとウィンドウズが起動してしまった。侮れないやつだ。
悔しいので次の日、客先へ行くフリをして本屋で立ち読みした。まぁ沢山あることだ、普段商売のネタにしているOSの本なんかどこにもないくせして Linux の本に関してはそこら中にあるって感じだな。
で、あちこち適当な本を選んでぱらぱらめくると確かにいろんな事が書いてある。まず生い立ちに関してフィンランドのlinus なんとかさんが作っただとか、そろそろビルゲーまってろよ、だとか AWK だとか Perl だとか sed だとかである。もちろんxxなんとかっていうディストリビューションを詳しくインストールからデスクトップの使い方まで詳しく解説して、さらにCDに収められているのまである。なんで8000円もだして OpenLinux のディストリビューション買ったんだって気分もあるのだけれど、まぁそれは仕方がない。さて、本屋で足だけ疲れた一時間を過ごしてやっぱり気がついたんだけれど、これじゃ商売にならないなぁというのが正直なところだ。あれだけの本があっても、やれインターネットサーバーの作り方だとか、でディストリビューションのインストールの仕方だとか、コマンドのリファレンスだとかの本が出ているとしても、「それがなんなの?」って言うところがつらいところなのである。
正直言ってXより Windows の方が動きもスムーズで使いやすいし、GUIなんかは「いかにも」だから、Macintosh の30年くらい後ろを行っている。
6年前に一時期OS2に夢中になったことがある。 Warp3 だ。Windows 3.1 より Notes が軽快に動いたし、Writing Head なんていうアタマの悪い日本語FEPを入れて適当なテキスト文書を作ったことがある。今でも Warp4 のパッケージと100円で秋葉原で購入した一太郎6がパッケージを空けないままその辺に転がっている。
いかんせPMが良くなかった。そしてあの難解なIBM用語だ。おお、音が出た、と言って喜び、おお、ディスプレィドライバを調整したらちゃんと16ビットで色が出たとか、デスクトップのカスタマイズツールを放り込んだら、ウィンドウの出方がアニメーションになったとか、ちゃんと Excel の Ver. 4 が動くんだぜ!なんて言って喜んでいた。結局そのまんま、次に出た Windows 95 に上書きされてそのまんまである。
オタクは何がいい?ソフトウェアの業界に心ならずも身を置いて、電車の中でパソコン雑誌を読むことが恥ずかしいと思った期間がずいぶん長かった。電車の中で「月刊アスキー」なんて読んでいられるかよ。って感じですね。いかにも「オタク」。そう言う言葉が特別にマスコミを賑わしていた頃だったかもしれないが、実際にパソコンに関する雑誌って「アスキー」しかなかった。
そのうち、電車の中で新入社員ぽい女の子が「やさしい Mac の Excel 2.0 の使い方」なんて本を読んでいるのを見かけ、若いサラリーマンが Excel 3.0 のマニュアルをいきなりカバンの中から取り出して読み始めるのをみて、さらにオジさんがYOMIURI−PCなんてぇのを読み出す頃には、パソコンを取り巻く環境というのはずいぶん市民権を得たものだ。
いまどき「週刊アスキー」なんかキオスクでさえ売っている。つまり、いまどきのコンピュータオタクは Linux の本を電車で読むのがトレンディなのかもしれない。そう、なかなか高価で購入できない Unix マシンを簡単に手に入れて、情報もふんだんにあり、コマンドラインとテキストベースの処理にしこしこ精を出すには一番のオモチャである。
一時期OS2系の雑誌を買いあさっていた時期を思い出すのだ。
しかしソースが出ていることもあるし、何しろ手軽だし、PCの値段が安い今の時期には実際にトレンディなシステムであるし、インターネットに関する知識が Unix を基本としている以上、これ以上入門にする素材としては確かに他にないのだ。
しかし、少なくともこれをメインにごりごり使うというやり方だけはまだ行けていないのだな。これが20世紀最後のOS Linux の現状なんだろう。中級以上の解説本にあるようなテキスト処理を、CRTに顔をくっつけてごりごり修正するにはもう、歳をとりすぎている。それでいながら、どこにでも転がっている Windows 系のインターフェースにはもう飽き飽きなのだ。それだけ Linux のディストリビューションが持っているデスクトップは新鮮だし、面白い。だけれどもネットワークのサービスを提供するには Unix 系の知識は絶対必要だし、使い勝手がいいとは言えないXは不要なのだが、キャラクタ操作には Unix の知識がいる。この分野では今やっぱりイキオイがあるWNTではGUIが邪魔だしなぁ。キャラクタベースで動いてくれればいいOSなんだけど、それだけはありえないんだろう。やっぱり Microsoft は分割してほしい。
ビジネスデスクトップとしてはまだ10年くらい幼稚だなぁ、Linux は。でもアプライアンスはきっと怖い世界だろう。きっと Javaとタッグを組むと組み込みでは強いぞ。/xxx で始まるクーリエで書かれたコマンドだの何だとかの解説を読んでいると、昔隠れてこそこそ読んでいた 「Software Design」だとか「インターフェース」だとかの記事を思い出す。「技術者N君の日記」とかね。
さすがに「トラ技」だけは手が出なかったけど。
あのころ HP9000は高価だった。起動するには主任のハンコが必要だった。自由に使えないもどかしさをDOSでごまかしていた。それが自由に安く手に入る。それが Linux の正体なんだろう。これから Linux をはじめようという方、技術評論社から出ている「Linux のはじめ方(塚越一雄)」という本をお勧めします。ディストリビューションに囚われない入門書でした。一時間で読めます。リファレンスではないけれどある程度、PC に慣れているヒトであれば面白い読み物だし、ちょっとしたツボを押さえたリファレンスです。それ以上必要な方はちゃんとしたリファレンスを購入しましょう。ちゃんと Unix についてのベースがあるヒトが書いたな、というのが感想ですね。これなら一応カネ払って買ってやろうという気分になります。
ごりごりスクリプト書いたり、勉強したくて他のリファレンスが必要であれば誰かから貸してもらったほうがいいでしょう。ということでプロが素人に勧めるシステムじゃないし、これでカネを取れるシステムでもないというところだ。しかし安く手に入るということでは侮れないし、どうせならキャラクタベースで起動してログインして startx でXが使えるようになれば面白い。
だれかそうやって使う方法教えて!