トイレにおける、男女の致命的な違い。そう、チューリップを使用するか、個室を使用するかの違いがある。男の場合、出るものが違えば入るところも違うのである。
おそらく、個室に入るときの男の気持ちというのは決して女性にはわからないものであるはずだ。
およそ、カイシャなどで、個室に入るニンゲンを見かけた事がある方ならば、野郎という種族は決して堂々と個室には入らないものなのだ。
また、カイシャでさっきいたアイツに「電話だよー」なんてやると居ない。あれ、どこ行ったのかな、なんてやっていると必ず誰かが「トイレだろ」とぼそっと言うはずだ。誰もそこまで言わないが、誰かは必ず思うものなのだ。不思議なモノでトイレのなかで、個室から出てきた上司と目が合った時のヒサンさ、気まずさというものは、出世に与える影響というものは決して女性には解らないものではないであろうか?
これが、なぜか公共の場所であると、ヒトビトというのは割とすんなり個室に入室する事が出来るのだ。また、不思議な事に、こうして並んでいるヒトビトは他人の気楽さからか、エロ本専門書店で目的を検索するヒトビトの様にお互いに目は合わせないし、お互いの不遇な毎日を慰め合っているような協力はしたいが絶対譲らないという毅然としたフンイキを漂わせている。
さて、いい駅便とは、紙の有無、清潔さというものもあるのだが、この入りやすさというのも条件のひとつなのだ。
さて、ワシラはマニラの商社マンとか、ペルーリマの大企業の幹部でもない限り、ゴルゴ13に狙われている訳じゃないから、まず、いつもの天気予報を見た後、行ってきます状態になるはずだ。いつものように前から3両目の二つ目のドアの前に立ち、こいつはこの先3つ目の駅で降りるはずだから、そいつの前に立とうと試みるはずだ。そうして座った後、斜め向かいに、いつもミニスカートが良く似合う、短大卒業3年目といった感じの女の子が居眠りをしており、次の駅では美しい人妻ふうが乗ってくるのだ。
ま、ほぼ、こんなケースは10%程度であって、他の多くの乗客はただの自分達の同業者、つまりただの日経かスポニチ広げたサラリーマンなのだが、お互い、何も解らなくても、無意識中の知り合いと化している。
こんな中で、どう見てもこいつは降りそうもないような辺ぴな駅のはずなのに途中下車するのは非常に不自然なのである。
出来れば痛勤快速から乗り換えたりするような、本日のニンゲン関係が大量に終了する駅をさりげなく利用したいものなのだ。
次に、これも非常に重要なのだが出来れば人通りの多い所にあるのが良い。改札の脇だとか、売店横などがいいのだ。これだと実にすんなり入れる。あ、そうだ、ここにちょっと寄り道しよう、あれ、たまたま空いてるんだからこっちもついでに済ませておこうかという顔で、充分空室情報を偵察した上で、個室を利用出来ると最高の気分である。
まぁ、レンタルビデオやでついでにエッチビデオも借りてしまいマシタ、といった気分で「これは本命ではありません」というカモフラージュが充分出来れば非常に浅はかではあるが最高なのだ。
トコロガ、電車から下車して、ミンナが歩き出す方向とは全く逆方向に駆け出すという行為は出来れば避けたい。こういったロケーションにある駅便はよい駅便とは言えない、が、実は緊急時の穴場なのだ。
そういった意味では桜上水と、笹塚は割と得点が高い。
昨日の深酒が応えた千歳烏山での出来事。あそこは急行停車駅であるわけで、昔急行が止まらなかったという点ではつづじが丘よりは格が上なのだが、なぜか個室はひとつしかない。ここはそれだけでも得点は低い。
既に決心を決めて、目標の目の前に立った時、既に先客が二人程待っていたのだ。ワタシにとっては一大事と決心したのだが、やはり大事なケツダンその他をクダシタ男が約二名居たのだ。そこに十代のヤングが一名やってきて「もー駄目なんです、先にさせて下さい」と言って割り込んできたのである。
さすがワタシ達先客3名は鷹揚なものである。いずれもキッチリネクタイをしめたサラリーマンであった。先頭は明らかにヤングの父親と同じくらいの年齢のおじさんである。こんな事で怒ってはいけないのだ。
さて、クダンのヤング君、余程つらいのだろう。ドアをドンドン叩きはじめたのだ。恐らく後ろに並ぶ皆様も同じキブンだったに違いない。そうなのだ「叩け、されば開かん」ワタシのハラは決まった、いや、もうはちきれんばかりだったから、声には出さないが(いやそれどころではなかったのだが)「よーし、叩けぇ」のキブンだったのだ。
トコロガ中から出てきたのはパンチパーマの御方だったのだ。彼はクダンのヤング君をじろっとみて
とおっしゃったのだ。それから悠々とワシラの顔をねめつけ御手を洗って出てゆかれた。(ヤング君はさっさと個室に消えた。急げよ)
ワタシ怒る勇気もなかったよ。もっともそんな状態じゃぁなかったけど...
クダンのショーネンはさっさとコトを済ませて、我々に迷惑をかけた事を深く詫び、手を洗って目指す目的地に向かって行ったけど。(よし、出すものだしていいセーネンになれよ)
その日は万全の準備をして、家を出たのに、既に千歳烏山を出たあたりから不調だった。問題はどの駅便を利用するかである。この日はビミョーだった。持つかもしれない、もたないかも知れない。ところがまとめてギチョンチョン。車両故障により山の手内回りは現在ウン行を停止しております、との御宣託である。しかし、ワシラのウン行は停止出来ないのだ。既に改札はくぐっている。いくら定期だとは言え、外に出て心あたりをノックするよりは身近なトコを探すのが人情というもんだ。早速新宿南口コンコースを検索した。
壮観だぞぉー。6つの個室にそれぞれ5人づつの仙人(いや先任)が並んでいるのだ。いずれも遠い中国五千年のイニシエに身を任せ皆様哲学している訳ですな。いや心強い(いや先を考えると心細い)。そうなのだ。これほど多くのヒトビトが、駅便を心の糧として、我が家から遠いここ新宿まで耐えてきたのだ。
ワタシ人生それほど長くない、これ数分間、中国五千年、歴史感じたヨ。
それ以来代々木の駅は大変重宝している。何しろ山の手線に誰が早朝から飛び込み自殺しても、総武線快速はちゃんと走っているんだぁな。浪人生の皆様にもご苦労と声を掛けたいが、残業するヒトビトにご苦労様は言えても、毎朝定時に出勤する人にもだれかご苦労様とおっしゃって頂きたいのだ。
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